● カスハラを受けたことがある人は全体の3割。特に若い男性や、金融・保険業で多い。 ● 最も強化して欲しい対策は、基本方針の社内外への公表。
近年、サービス業をはじめとする多くの職場で、「カスタマーハラスメント(カスハラ)」の問題が深刻化しており、国や一般企業が対策を打ち出しています。 企業は、研修の実施のほか、対応方針の明確化など、カスハラから従業員を守るための対応が求められています。
インターワイヤード株式会社では、「カスタマーハラスメント」についてアンケートを行い、行為の種類や加害者の属性、従業員の理解度や対応、職場風土、会社の施策など、カスハラの実態についてまとめました。
調査は2024年8月2日〜8月5日にかけて実施し、全国の労働者1,293人から回答を得ています。
● カスハラを受けたことがある人は全体の3割。特に若い男性や、金融・保険業で多い。 ● カスハラの定義を理解している人はおよそ半数、判断基準の理解については4割を超えず。 ● 会社の取り組みを評価する声は2割前後にとどまる。 ● 職場の風通しの悪さが、カスハラが起きたときの相談の障壁に。 ● 一人で対応せざるをえなかった人には、会社のカスハラ施策が浸透していない。 ● 最も強化して欲しい対策は、基本方針の社内外への公表。
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■カスタマーハラスメントの実態
『過去1年以内にカスハラを受けたことがある』との回答は、全体の3割近くにのぼった(全体から『過去1年以内に受けことはない』を除いた割合)。
受けた行為としては、『暴言』が最多の12.4%、次いで『揚げ足取り』が9.3%、『長時間の拘束』が7.0%と続いた。
<属性別>
男女別でみると、カスハラを受けたことがある「男性」は3割強、「女性」は2割半ばと、「男性」の方がカスハラを多く受けている。
年代別でみると、若い年代ほどカスハラを受けた人が多く、「20代」では約4割にも及んだ。カスハラは若い男性が受けやすい傾向があるようだ。
業種別では、「金融・保険業」が38.2%と最も多く、「卸売・小売業」が37.1%と続いた。それ以外の業種は3割前後で、大きな差異はなかった。
■カスハラの増減
1年前と比べ職場でカスハラが増えているかどうかについて、全体では肯定回答が2割強、否定回答が3割半ばと、否定が肯定を大きく上回っており、カスハラは1年前との比較では増えてはいないようだ。
ただし、業種別では「情報通信業」で肯定が否定を上回り、カスハラが増加しているとみられる。
■カスハラの加害者
加害者の性別について、全体では『男性』が5割、『女性』は1割半ばと『男性』が圧倒的に多かった。
被害者側から見ると、男女ともに加害者は『男性』の方が多いが、被害者が女性となると、加害者の『女性』が比較的多い。
加害者の年代について、全体では『20 代』は4.2%、『30 代』は11.9%、『40 代』『50 代』『60 代以上』がそれぞれ約25%と、中高年の加害者が多い。
被害者の年代が「20 代」「30 代」では『30 代』からカスハラを受けることが多く、「40 代」では『40 代』から、「50 代」「60 代」では『60 代以上』から受けた人が多かった。 自分と同年代以上の人から受ける傾向があるようだ。
■初期対応
初期対応について、全体では、『上司と一緒に相談』『自分一人で対応した』が3割前後で、上位2項目となった。 年代別では、『自分一人で対応した』は若い年代ほど少なかった。
自分一人で対応した理由について、全体では、『自分一人で対応できた』は最多の4割となった。 次いで、『ワンオペ』が2割強、『相談したが対応してもらえなかった』や『見て見ぬふりをされた』が1割前後となっており、やむを得ず一人で対応しなければならない状況が少なからずあるようだ。
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■カスハラの理解度
定義の理解について、全体では”理解している”は半数弱にとどまり、”理解していない”は1割半ば、”カスハラ自体知らない”も1割強だった。 男女別でみると、「男性」の方が理解度は高いようだ。「女性」では” カスハラ自体知らない”が1割半ばに及ぶ。 年代別では、「20代」「30代」の若い世代で、”カスハラ自体知らない”が2割前後と非常に多かった。 業種別では、「金融・保険業」「不動産業」の理解度が非常に高かった。 一方、低かったのは「建設業」「製造業」「卸売・小売業」「飲食店・宿泊業」「サービス業」となった。
判断基準の理解について、全体では肯定回答は4割弱と、定義の理解度に比べてだいぶ低い。 会社でしっかりとした判断基準が定められていない、もしくは従業員に十分に周知されていない状況がありそうだ。 属性別の傾向は定義の理解度と同様であった。
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■カスハラへの対応
『クレームとカスハラとの区別がつく』『接客態度に日ごろから気を付けている』などの従業員個人の対応について、肯定回答は3割強〜3割半ばにとどまり、従業員個人に委ねるには心もとない。 そこで重要となるのが、会社の取り組み。
『カスハラへの対応や手順の理解』『会社のルールやマニュアルが役に立つ』の肯定回答は2割前後にとどまり、こうした会社の取り組みも十分機能していないことが分かった。
<一人で対応した理由別>
カスハラに一人で対応した理由のうち、「自分一人で対応できたため、誰にも相談しなかった」とそれ以外の選択肢(上司や同僚の協力が必要なのに一人での対応を余儀なくされた人)を比較集計したところ、前者(相談せずとも一人で解決できた人)は後者(相談を必要としたが一人で対応せざるをえなかった人)より項目全般にわたって高い傾向であり、中でも『カスハラへの対応手順の理解』『カスハラとの区別がつく』が大幅に高かった。 これが示唆するのは、従業員が手順や判断基準をきちんと理解していると、一人で解決できるということ。やはり、ルール・マニュアルの周知は非常に重要である。
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■職場の実態と意識
全体では、『職場のコミュニケーション』や『人間関係』で肯定回答は4割強、上司への信頼では3割台に過ぎなかった。
<一人で対応した理由別>
ここでも「相談せずに自分一人で解決できた人」と「相談を必要としたが一人で対応せざるをえなかった人」を比較集計すると、後者は前者に比べ全般に評価が低く、中でも『職場のコミュニケーション』『自由にものが言える雰囲気』が非常に低かった。 こうした風通しの悪さが相談への障壁となっているようだ。
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■会社のカスハラ施策
会社のカスハラ施策へ肯定回答は全般に2割前後にとどまり、カスハラ対策は十分とは言い難い。
<一人で対応した理由別>
ここでも「相談せずに自分一人で解決できた人」と「相談を必要としたが一人で対応せざるをえなかった人」を比較集計すると、前者に比べ後者はやはり全般に評価が低い。 誰もが相談せずとも一人で解決できるためには、しっかりと会社でできる対策をうつことと、その対策の浸透が課題となろう。
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■強化して欲しい対策
『取り組みを強化して欲しい』(全体から『強化して欲しい取り組みはない』を除いた割合)との回答は6割強であった。 対策として上位に来たのは『基本方針の社内外への公表』が20.8%で最多、次いで『ルールやマニュアルの整備』の18.4%、『一般社員教育』が17.0%、『管理職教育』の16.1%であった。
業種別では、『取り組みを強化して欲しい』は「金融・保険業」が77.4%と最も多く、次いで「卸・小売業」が65.9%と続いた。 これらの業種ではカスハラ被害が多く、被害が多いからこそ、対策強化の声が大きいのかもしれない。
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