● 公共サービス業ではカスハラ被害者は33.5%。「医療・介護・福祉」や「役所勤務」が特に多い。 ● 現場対応・会社の取り組みは全般に不足し、カスハラ対応は十分とは言えない。
近年、国や一般企業はカスタマーハラスメント対策を打ち出しており、世間で注目を集めています。企業においては、研修の実施のほか、対応方針の明確化など、カスハラから従業員を守るための対応が求められています。
インターワイヤード株式会社では、2024年8月に全業種を対象としたカスハラに関する調査を実施しました。今回、その調査結果から、特に公共サービス業に焦点を当てて追加調査と詳細な分析を行った結果を報告します。 本調査は、2024年10月24日〜10月25日に、全国の公共サービス業従事者719名を対象に実施しました。
※前回調査(全業種版)
https://www.dims.ne.jp/timelyresearch/2024/241031/
● 公共サービス業ではカスハラ被害者は33.5%。全業種(29.3%)に比べてやや多い。
公共サービスの中では、「医療・介護・福祉」や「役所勤務」が特に多かった。 ● カスハラの理解度について、全体では全業種より高いものの、「医療・介護・福祉」ではかなり低い。 ● 現場対応・会社の取り組みは全般に不足し、カスハラ対応は十分とは言えない。 ● 職場風土に関して、「医療・福祉・介護」において風通しが悪い傾向。 ● 会社のカスハラ施策への評価は全般に低く、カスハラ対策に後れが見られる。
中でも「医療・介護・福祉」が特に低い。 ● 『取り組みを強化して欲しい』は約7割と、全業種を上回る。
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■カスタマーハラスメントの実態
『1年以内にカスハラを受けたことがある』との回答は、公共サービス業全体で33.5%にのぼった(全体から『1年以内に受けことはない』を除いた割合)。 公共サービス業でのカスハラ被害は、『全業種』(前回調査、29.3%)に比べ、やや多い結果だった。
受けた行為について、『大声での恫喝や暴言』が17.5%と最多で、次いで『長時間の拘束や居座り』が13.5%、『クレームと無関係のミスを責める、揚げ足取り』が13.2%と続く。いずれも全業種を上回った。
<業種別>
業種別で見ると、『1年以内にカスハラを受けたことがある』のは、「医療・介護・福祉」で39.9%と最も多く、次いで多かったのは「役所勤務」の38.3%。最も少なかったのは「教育・保育」で21.2%だった。
受けた行為について、「医療・介護・福祉」の上位5位に『暴力行為』『セクハラ』が挙がっているのが特徴的。この業種では、個別に接する機会が多いことが、こうした出方に繋がっているのかもしれない。 「役所勤務」の上位項目は、『長時間の拘束や居座り、電話を切ってもらえない』や『クレームと無関係のミスを責める、揚げ足取り』が他業種に比べ非常に多かった。
※「警察・消防」はサンプル数が少なく、これ以降分析の対象外とする。
■カスハラの加害者
カスハラ加害者の性別について、全体では”男性が多い”が約6割を占め、圧倒的に『男性』加害者が多かった。
業種別では、「医療・介護・福祉」で他の業種に比べて『女性』によるカスハラ加害が多い。他方、「役所勤務」では、『男性』による加害が顕著である。
カスハラの加害者の年代について、全体では『40代以上』の中高年層が多かった。 その中で、「医療・介護・福祉」や「役所勤務」では『60代以上』が半数近くにのぼり、高齢者からのカスハラが非常に多い。 「バス・鉄道・航空」では30代以下の若い年代が他業種よりも多かった。
■カスハラの増減
一年前と比べてカスハラは増えているかどうかについて、『減っている』『やや減っている』は1割未満とわずかで、『増えている』『やや増えている』は2割半ば。 公共サービス業では、若干増加傾向のようだ。
■初期対応
初期対応について、『上司に相談し、一緒に対応』が47.3%と最も多く、次いで『自分一人で対応』が37.8%、『先輩や同僚に相談し、一緒に対応』が22.4%と続いた。 全業種に比べ、上司へ相談する人も多いが、自分一人で対応する人も多かった。
自分一人で対応した理由について、『自分一人で対応できた』が最多の約6割と、全業種に比べ、一人で対応できたケースはかなり多い。
サンプル数が少なく参考値ではあるが、業種別では、「医療・介護・福祉(n=22)」において、『自分一人で対応できた(63.6%)』が多い一方、『先輩や同僚に見て見ぬふりされた(22.7%)』『上司に見て見ぬふりされた(13.6%)』『誰に相談したらよいか分からない(9.1%)』も多い。 「医療・介護・福祉」では、相談を必要としたが一人で対応を余儀なくされた人が少なくないようだ。
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■カスハラの理解度
定義の理解について、公共サービス業全体では”理解している”は5割半ば、”理解していない”は1割半ばと、全業種に比べ、理解度は高い。 業種別では、「電気・ガス・水道・電話」「教育・保育」が高い。 一方、「医療・介護・福祉」は非常に低かった。
判断基準の理解について、公共サービス業全体では全業種より高いものの、肯定回答は4割にとどまっている。 会社でしっかりとした判断基準が定められていない、もしくは従業員に十分に周知されていない状況が考えられる。 業種別では、定義の理解と同様の傾向で、ここでも「医療・介護・福祉」が低い。
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■カスハラへの対応
実際にカスハラ起きた際は、現場の従業員が瞬時に判断し対応する必要がある。 よって従業員一人一人が正しい知識と意識を持ち、適切に対応できることが重要である。 調査結果を見ると、『正当なクレームとカスハラの区別がつく』『接客態度に日ごろから気を付けている』の肯定回答は3割台と、決して高いとはいえない。
他方、『上司やヘルプラインに相談、引継ぎできる』『カスハラへの対応や手順の理解』など現場の従業員を支える会社の取り組みについても肯定回答は2割前後にとどまる。組織としてのカスハラ対策は、決して十分とはいえない状況である。
中でも、「医療・介護・福祉」はどの項目も低く、カスハラ対応が万全とは言い難い。
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■職場の実態と意識
『職場のコミュニケーション』や『人間関係』の肯定回答は4割強、『上司への信頼』では3割台。全業種とほぼ同水準だった。 業種別では、「医療・介護・福祉」で風通しが悪く、相談しづらい風土となっているようだ。
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■会社のカスハラ施策
会社のカスハラ施策の肯定回答は1割半ばにとどまり、全業種と比べどれも低く、公共サービス業では、カスハラ対策に後れを取っていると言わざるをえない。 そもそもカスハラ対策をあまり重視していないかもしれない。 業種別では、ここでも「医療・介護・福祉」が全般に非常に低く、あまり対策されていないようだ。
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■強化して欲しい対策
『取り組みを強化して欲しい』(全体から『強化して欲しい取り組みはない』を除いた割合)との回答は約7割と、全業種に比べ多い。 上位に来た対策について、『基本方針の社内外への公表』が28.7%と最多であり、『一般社員教育』が23.8%、『管理職教育』が23.1%、『ルールやマニュアルの整備』が20.4%と続いた。 やはり、従業員も会社の取り組み不足を強く感じているようだ。
カスハラが多い業種をみていくと、「医療・介護・福祉」では、『ルールやマニュアルの整備』を推す声が相対的高い。 他方、「役所勤務」では、『職場内の録画・録音』が23.4%にのぼり、他業種よりも際立って多く、この業種のカスハラ被害の実態(『長時間の拘束や居座り、電話を切ってもらえない』や『クレームと無関係のミスを責める、揚げ足取り』が多い)とリンクしている。
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